【文・インタビュー宗像明将(音楽評論家)】

バンドじゃないもん!というグループを一言でまとめるなら、神聖かまってちゃんのドラムのみさこが、「女の子と一緒に努力と協力をして、切磋琢磨しながら『売れた』という実感をつかみたい」と切望して始めたグループだ。

「え、神聖かまってちゃんで売れたのになぜそんなことをやるの?」という声が聞こえてきそうだが、まずは話は2010年11月12日にさかのぼる。

その日、私は「MARQUEE」の取材のために、の子以外の神聖かまってちゃんのメンバーのもとを訪れた。当時は2枚同時リリースされるアルバム「つまんね」「みんな死ね」の制作直後で、彼らが疲労感を隠そうともせず「今年は3回解散しそうになった」と平然と話す姿に軽いショックすら受けた。

そのとき、疲れ切った表情と暗い目で、インタビュー中にだるそうにお菓子をバリバリ食べていた女の子がみさこだった。今思い返すと、現在のバンドじゃないもん!でのみさことは別人のような、精気の抜けた若者だった。「このインタビュー、そのまま載せて平気なのだろうか」と思いつつ、そのまま「MARQUEE」に載ることになった。

年が明けた2011年2月25日、SHIBUYA-AXで神聖かまってちゃんとももいろクローバーのツーマンライヴ「ももクロとかまってちゃん」が開催された。そのとき、友人の作曲家・ミナミトモヤが来場していて、彼らと一緒に飲んで帰ることにしたのだが、飲み屋の向かいの席にやけに可愛い女の子がいた。「私、ミナミさんやみさこさんとバンドじゃないもん!っていうのをやってるんです」。彼女こそ、金子沙織、かっちゃんだった。そんな縁で、私もバンドじゃないもん!のライヴに足を運ぶようになる。

バンドじゃないもん!の初期メンバーは、みさこ(ドラム)、かっちゃん(ドラム)、ミナミトモヤ(キーボード)、そして神聖かまってちゃんのマネージャーの劔樹人(ベース)という4人組だった。その頃のみさこは、以前の取材での姿が嘘のように楽しそうだったことが印象的で、彼女の笑顔に惹かれて私もライヴによく行くようになった。

忘れ難いのは、2011年5月7日に原宿アストロホールで開催されたバンドじゃないもん!とでんぱ組.incのツーマンライヴだ。ステージに2台のドラムセット以外何もない。会場にはミナミトモヤも劔樹人もいたのだが、突然バンドじゃないもん!はツインドラムユニットに変わってステージをしたのだ。でんぱ組.incのファンの皆さんが最前列を譲ってくれたのに、バンドじゃないもん!のときに最前列に行ったのが5人しかいなかったことも思い出す。

その頃のバンドじゃないもん!は牧歌的なユニットだった。そもそもライヴ自体があまりない。ライヴの告知が10日前なら早い方だ。そんな活動スタイルが変わったのが、2012年10月3日にミニ・アルバム「バンドじゃないもん!」でCDデビューしたことだった。ここで、どういうユニットかよくわからなかったバンドじゃないもん!が「ツインドラムあいどる」と定義された。彼女たちはアイドルになったのだった。

さらに大きな変化は、2013年2月6日のシングル「ショコラ・ラブ」のリリースを経ての5月7日、突然新メンバー3人の加入が発表されたことだった。真昼間にUstreamの配信で新メンバーの加入を発表し、そのまま熱海へ一泊旅行に。この恋汐りんご、七星ぐみ、水玉らむねの唐突な加入劇が、実は茶番ではなくガチだった、というのも当時のバンドじゃないもん!の置かれた状況を静かに物語る。実は当時のバンドじゃないもん!は、まだオリコンのチャートの100位内にランクインしたことがなかったのだ。

そのバンドじゃないもん!の現場が、でんぱ組.incも在籍するディアステージ所属の新メンバーの加入で一気に勢いづいていく。2人体制への感傷を吹き飛ばしたのが、6月8日の新体制によるディアステージでの初ライヴだった。8月21日にはインディーズから「UP↑ぷらいむ / タカトコタン-Forever-」を限定2000枚でリリースして完売を目指すことになるのだが、そのさなかの8月27日にかっちゃんの脱退が発表される。9月19日には下北沢GARDENでかっちゃんが脱退。10月18日には、2.5Dで望月みゆが加入。12月18日にはthe telephonesの石毛輝が書き下ろしたシングル「雪降る夜にキスして」がリリースされ、初のオリコン週間シングルチャート20位を記録した。

いろいろあったがこれで安心……と思わせたのも束の間、2014年2月22日には水玉らむねの脱退が発表された。最後のステージは4月6日だ。

「バンドじゃないもん!ってよくわからない、よくメンバーも変わるし」という声も耳にする。みさこはもっともそうした声にさらされている当事者だろう。ツインドラムではなくなったし、編成も大きく変わってしまった。

そして新メンバーがオーディションで決まったという。このインタビューは、そんな夜に行われたものだ。みさこの瞳の色がとても黒い。誰かに話をしたい、という無言のオーラをこれほど放つみさこを見たのは、出会って3年以上の付き合いで初めてのことだった。メディアにあまり出ない一面だが、実際のみさこはちょっと心配になるぐらい思慮深く、そして自分の考えをしっかり話す人物だ。

新メンバーの加入を機に、遂にこれまで避けていたリーダーへの就任を決心したみさこ。そしてバンドじゃないもん!の目指すものがこれまで以上に明確になってきた。バンドじゃないもん!の「新リーダー」みさこのインタビューで、彼女のヴィジョンをぜひ知ってほしい。もうすぐ私たちは、これまでと大きく違う新しい「バンドじゃないもん!」を目にするはずだ。

「最初はドラム2人と、フロントにもメンバーを入れたいと思ってたんです。私は一人でフロントに立ったり、リーダーになったりは……したくなかったというより、自分のことそういう器を持った人間だって思えなくて。つい先日『英国王のスピーチ』という映画をDVDで見たのですが、吃音症の第二王子が主人公で。自分が望んでいなかった、その自信がなかった主人公が、国王になる運命から逃れられなくなっていく、その姿に自分を重ねながら観てました」

——そんな性格なのに、なんでバンドじゃないもん!を作ろうと思ったの? かっちゃんも劔さんに紹介してもらったんだよね。
「それはこのバンドじゃないもん!自体が自分の力だけで始めた訳ではないからです。当時女の子のユニットをプロデュースしたかった劔さんや、それに賛同したミナミトモヤさんのタイミングが、合致したからこそ。突然ですが、私は無宗教だけど、一個だけ人生で信じてるものがあって。それは『きっかけ』っていうものなんですよね。人との縁やタイミング、そういう何かの『きっかけ』を大切にしてきて、今まで「あれは間違いだった」と思うことが一つもないからなんです。他には、の子さんありきの神聖かまってちゃんで一色だった当時の生活から、自分がきちんと選択肢を持って頑張れる場所が欲しかったのかも知れないです」

——バンドじゃないもん!を始めたとき、「女の子と一緒にやりたかった」と言ってたけど、そもそもなんで女の子なの?
「例えば、まどマギ(『魔法少女まどか☆マギカ』)でまどかが何の利益もなく魔法少女たちを救うところや、世の男性のために捨て身で働くAV女優の方などへのリスペクトが、私はあるんです!世界平和や人類愛のために身を削る女性たちに憧れがあって」

——なんかいろいろ飛躍してる(笑)。でも、みさこってなんだかよくわからない博愛精神が強いよね。子供の頃に目の前でウサギが殺されるのをなすすべもなく見てたとか、そういう経験でもあるの?
「そういうのはないな(笑)。両親が道徳的な人だったからかな?でも、そういうキラキラした気持ちや聖母感って、女の人は誰でも持ってるって私は思っています。だから、女の子と一緒に何かを通して無償行為に明け暮れたかった(笑)」

——とはいえ実際に女の子がグループ作ると、感情的ないざこざも起きるでしょ? バンドじゃないもん!に限らず、それはもうどこにでも起きる。
「例えばかっちゃんとは多分人との距離感がたまたま似ていて、喧嘩腰に議論することがあっても、険悪になることはなかった。でも、やっぱり毎回そうとは限らないですよね。でも同じ人間だから、現実として理解できない気持ちは、女の子に限らず、誰に対してもないんです。こじれることがあっても、それぞれの正義があって、誰が正しいとか悪いとかじゃないんだなって…だからこそ一度こじれると解決も難しいと思う。ただ、私は感情移入しやすくて他人からの『負』の気持ちをもらいやすいから、どうしても目をつぶりたくなる瞬間っていっぱいあります。それじゃダメ、どうにか向き合わなきゃっていつも反省してます」

——しかも初期とは違って今は完全にアイドル。大変じゃない?
「いやー、最初は求められることができなかったのが申し訳なくて……。ヲタの人たちがどうしたら喜ぶか、私たちもスタッフも詳しいわけじゃなかったから、探り探りでした。私はファンとの交流を求めるほうだから、握手会やチェキ会は楽しいんですよ。でも、私はアイドルとして魅力がある人間じゃないとも思うから……。私の中の普通のアイドル像って、理想と現実の間にいる存在なんです。でも私は現実しか見せられない。ダメだと思うけどこれしかできない。だから、これまでもメンバーのおかげでなんとかなってるんです。他のメンバーもかなり素に近い部分ばかり出してると思うけど、誰かの理想にはなれてる」

——みさこは相変わらず自己評価が低いよね。
「そういう意味では自信はない!ライヴとか人との熱量を共有する場所は好きだけど、アイドルやアーティストに必要な自己顕示欲がかなり少ないからかなあ、とも思います」

——アイドルになると、セールス面でもシビアな現実と向き合うことになるよね。
「でも、なかなか売れないのが嬉しさでもあったんです。努力している実感がほしかったから、アウェイなライブも嫌いじゃなかった。神聖かまってちゃんは、元から素敵なものを持っていたのに、ネットで話題になってからじゃないと売れなかった……だから、『自分たちの力で今がある』というのをバンもん!を通して掴みたくて、そのために経験できる辛いことは、喜びでもあった」

——その一方で、メンバーが入れ替わる。つらくない?
「それこそ『UP↑ぷらいむ』の歌詞に書いたことで、変わることも変わらないこともある、でも絶対に何かが残ってる。だからこれからも続けるし、私は諸行無常に悲観的にはなりたくないです」

——とはいえ、らむねちゃんの脱退は精神的にこたえたでしょ?
「はい……でも本人の気持ちもわかってたし、バンドじゃないもん!でらむてぃんがやりたいことをできるかと言われたら、やっぱり難しかった。誰かプロデューサーがいるわけじゃないし、自分たちで決めなきゃいけないことが多いから。目標や、そのために何をするか、パフォーマンスや方向性についてだったりも」

——そういう、ある程度自由さがあるぶん大変な状況を、今後みさこはどうする?
「だから、これからは私がその自由さに、きちんと形を与えたい。メンバーの個性を見て、やりたいことを理解して、楽曲を揃えて、ライブパフォーマンスも練り直す。せっかく素敵な新メンバーが入ってくれても、誰かがまとめないとすごくもったいないと思ったから。これまでずっとリーダーになることから逃げてたけど、今回も色々な『きっかけ』があって、新メンバーが入ったタイミングで「ならなきゃな!そうだ、なろう!」って自然に決断できたんです。「リーダーやります」って伝えたとき、マネージャーの渡邊さんは泣きそうになってました(笑)」

——そこはすごく大きな変化だよね。みさこがリーダー、事実上はプロデューサーになる。でも外野からは、まだ「神聖かまってちゃんの片手間にやってる」と誤解されてるかもしれないから払拭したいよね。
「むしろ『バンドじゃないもん!ばっかりやってる』と言われることもあるんですよ。でも私にとってはどっちも全然別の居場所なんです」

——バンドじゃないもん!と神聖かまってちゃんだけで、尋常じゃなく忙しいよね。
「だからもうプライベートの時間を作るのは諦めてる(笑)。メールの返信が1週間後とかになっても、そういうのを理解してくれる友達しかもう残ってないんですよ」

——みさこはバンドじゃないもん!をやるうえで年齢的なものを気にする?
「しますね。でも、例えばかっちゃんは将来的には家庭を持ちたいって以前から言ってたけど、私は仕事的にも結婚できなくても仕方ないと思ってるから、音楽を優先したい。それにしても、みんなは恋愛とかどうやってしてるんだろう?もう全然わからない……色々思い出せない……」

——思い出して(笑)。でも、意地の悪いことを言えば、みさこがバンドじゃないもん!のメンバーをプロデュースする側として、表にでない選択肢もあるよね。それを選ばないのはなぜ?
「いやー、私はライヴがあるからやってるんです。だからステージに立たない立場を選ぶことはない。でも自分が主人公になるわけでもない……」

——そこだけ弱気なんだ(笑)。
「そもそも強気に『アイドル』って名乗ったのはワーナーからのメジャーデビュー時に提案されたことで、当時はそちらからのプロデュース的なものも多少あって。アイドルに憧れはあったけど、私が名乗っていいのか?と思ってたから(笑)でも今はずっと一緒にやってきたワーナーの担当さんも止むを得ず外れてしまって、ディアステージからも特に何も言われず任されているので、プロデュースする人がほぼいないんです。だから、そこは私が責任持ってやりたい」

——アイドルになったのって、女の子でユニットをやろうとしたときの結果論だったんだ?
「ほとんどそうです。それに、アイドルの多くがアイドルである時期を踏み台だと思ってるだろうけど、私はそう考えてないですし。バンドとアイドルの狭間に立って、『アイドルは聴かない』という人の頭の中の垣根を、楽しいパフォーマンスで壊す……それが目的だから。まだまだそれができてないと思うかや、やめられないです」

——みさこがバンドじゃないもん!で目指してるのってどんなもの?
「人に影響を与えたいです!最初はそんな明確ではなくて、一つずつ着実に上に行きたいだけだったけど。やっぱり、自分の人生も、いろんなものから影響を受けて変わってきたから……例えば、『ファイナルファンタジーVI』とか(笑)。音楽含む娯楽って、あってもなくてもいいものじゃないですか。別になくても、命は続く。でも私はそういうのがない、心に豊かさのないような人生なら、人が生きてる意味ってないと思うから。生きるためだけに生きる、誰かの一本道の人生を、ちょっと曲がり道させたいんです。もう道が曲がってる人の頭の中も、留め金を壊して解放したい。ただ私は、たくさん曲を作ったりできる人じゃないから非力ではありますが……」

——また最後で弱気になる(笑)。
「でも弱気でもいられないです。アイドルである以上、終わりは来るし、生き急がなきゃなって思ってます。目標とか真面目に言う機会がないけど、よく「どこでもいいから海外でライブしたい」って言ってるのは、アイドルにも馴染みがないような地域に行って、音楽的なジャンルがなくてもこんなに素晴らしいことができるんだよ、って思ってもらえるようなことがしたいから」

——好きなアイドルっている?
「れにちゃん(ももいろクローバーZの高城れに)!あと、影響を受けてるのは森高千里さんです」

——同じドラマーだ! しかもアイドルに対してメタ的なところも通じるものがるよね。
「単純に曲が好きなのもあるけど、森高千里さんは曲を作ったり、楽器を演奏したり、彼氏がいたと公言したり、それまでのアイドルやJポップの定義を壊すことに成功したすごい人だから。だからこそ多くの人に支持されてるんだと思う。メタ的であっても、私にとってのアイドルの理想です。バンドじゃないもん!も、形を変えつつそんなことがやりたい」

——それは聞いていて、すごく腑に落ちる。
「でも、こんなに理想があるのに、私の要領が悪くて!本当は、ライブ用の音源を相談しながら作ったり、振り付け師さんに何回も無理言ったり、熱意だってあるのに……それが人に伝わらないのは、見えるところであんまりがんばってないからかも。悔しいけど自分のせいかな」

——でも、らむねちゃんの脱退をメンバー同士で話し合って決めて、事務所が受け入れるとか、それこそバンドみたいな形でメンバーが真剣にやっているよね。
「ディアステージから3人が入って、新たにバンドじゃないもん!を知ってくれた人が増えたことは、本当に3人のおかげで。みゆちぃもひとりで入ったのに真面目に頑張ってくれてるし、みんなにすごく感謝してる!バンドじゃないもん!は、これからも個性豊かなメンバーでお届けしたいんです。いつか解散した後も『あのアイドル面白かったね』『あんな人が在籍してたんだ?』って言われ続けるようにしたい。バンドで言うと、はっぴいえんどみたいな」

——話がでかすぎるよ!
「今度の新メンバーもすごくピッタリな女の子が入ってくれた!音楽的なパフォーマンスを柔軟に引っ張ってくれそうな子と、女の子にも支持されるような個性に歌やダンスの技術をしっかり持ってる子。話題性のためだけじゃなく、本当にバンドじゃないもん!のことを考えて選んだんです」

——楽しみだけど、「メンバーの脱退や加入が多い」とまた言われちゃうよね(笑)。
「私もそう思います(笑)。でも、できたら減らしたい。それぞれのメンバーのやりたいことをバンドじゃないもん!でできるようになるといいな。そうする!がんばります!」